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2024 11/11

借用書の書き方は?作成時の重要なポイントや作成のメリットについても解説

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「借用書の書き方は?必要事項をはじめ実際に使えるテンプレート付きで解説」のアイキャッチ

友人や家族とお金の貸し借りをするとき、トラブル回避のために作成した方がいいと言われている書類が「借用書」です。

借用書はお金の貸し借りにおけるトラブル回避の目的だけではなく、万が一のときに有力な証拠として利用できます。

しかし借用書を作成した経験がない人は、必要性や書き方が分からない場合も多いでしょう。

本記事では、借用書の必要性や、借用書の書き方について注意したいポイントをまとめました。

借用書の作成を検討している人は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

借用書とは家族や友人をはじめ個人間でのお金や物品の貸し借りで作成するべき書類

借用書とは、お金や物品の貸し借りがあったことを証明する書類です。

借用書の書き方はお金を貸す側は「貸主」、お金を借りる側は「借主」と表記します。

お金の貸し借り自体は、借用書がなくても自由に行えるものの、お金を借りる時には借用書を作成しておくことが無難です。

つまり、口約束だけの貸し借りではトラブルが起こりやすいことがデメリットと言えます。

口約束のみの貸し借りで起こるトラブル3選
  • 借主が「借りていない」と言い張っており、お金を貸した証拠がないため逃げられる
  • 借主に「この日までに返済して」と伝えても「その日だったっけ?」と誤魔化され、返済してもらえない
  • 事前に約束していたはずの金利より高い金利で請求され、借主が一方的に不利になる

借用書がなければ貸主が不利益を被るイメージですが、実は借主が不利益になるケースも考えられます。

借用書があると、貸主と借主がそれぞれ借用書に準じた条件で契約を履行できるため、どちらか一方が不利になることを回避できるでしょう。

お互いに不利益とならず、人間関係を壊さないためにも、借用書は作成するべきです。

借用書は貸主と借主のどちらが作成してもよい

借用書を誰が作成するかは法律や条例での定めは無く、貸主と借主どちらが作成しても効力は同じです。

一般的には、借用書は基本的に貸主が作成し、借主や連帯保証人が内容を承諾して完成させます。

お金を貸し借りする場合、貸主主導で契約を進めた方がいいでしょう。

もし返済が滞る場合や、逃げられそうになったとき、貸主が対応しやすくなります。

借用書は貸主と借主、どちらが作成する場合でも、一方のみが有利になる内容にはしません。

両者に公平な条件か、または利息を付ける、返済期限なしにはしないなど、多少貸主が有利な条件で作成します。

契約内容は貸主と借主でよく話し合い、双方納得できたうえで借用書にサインをしてください。

借用書の法的効力は作成した人や条件による取り扱いで異なる

「とにかく借用書は作るべき」と分かったところで、次は借用書の法的効力についてご紹介します。

「借用書があるとお金を返済してもらえなかったときに取り立てができる」とイメージする人も多いでしょう。

とはいえ実際には、借用書を作成した人や条件によって法的効力が変わります。

借用書をはじめ契約に関する書類には、「私文書」と「公文書」の違いがあります。

個人が作った借用書は私文書であり、公的機関に依頼して作成してもらった「公正証書」は公文書です。

公証制度とは,国民の私的な法律紛争を未然に防ぎ,私的法律関係の明確化,安定化を図ることを目的として,証書の作成等の方法により一定の事項を公証人に証明させる制度です。
引用:公証制度について|法務省

書類の種類 作る人 法的効力
私文書 個人 裁判で貸し借りの有力な証拠になる
公文書 公的機関やそこに所属する公務員 借主が返済滞納した場合、裁判をせずに貸付金を回収できる

借主が返済を滞らせた場合は、催促する裁判を起こす権利があります。

借用書はこの裁判で「借主に対してお金を貸した」という証拠となり、事実を証明する書類として非常に有力です。

とはいえ、借用書のみでは裁判なしで強制的にお金を回収できません。

借用書に比べて、公正証書の方が法的効力が強く、裁判を起こさなくても借主からお金を回収できます。

公正証書は作成に公証人手数料が必要です。

万が一借主が滞りなく返済を完了させた場合、無駄な出費となることがデメリット。

公証人手数料は貸したお金の金額で決まり、それぞれ以下の通りです。

貸した金額 公証人手数料
100万円以下 5,000円
100万円以上200万円以下 7,000円
200万円以上500万円以下 11,000円
500万円以上1,000万円以下 17,000円

上記の金額以降、貸した金額が高くなれば公証人手数料も上がり、上限はありません。

公正証書の作成を司法書士に依頼すれば、司法書士に支払う報酬も発生し、金額は5万円前後になる場合も。

万が一のためとは言え、気軽に支払える金額ではありません。

ある程度の信頼関係があるなら、無理のない範囲での貸し借りであれば個人で作る借用書でも問題ないでしょう。

借用書作成のメリットとデメリット

借用書を作成する必要性が分かったところで、次は借用書のメリットとデメリットについて紹介します。

借用書を作成して金銭のやり取りを行うと、貸主・借主ともにメリットが大きいと言えます。

とはいえ、一切デメリットがないわけではありません。

借用書を用意した場合に得られるメリットと、発生してしまうデメリットについてしっかり理解しておきましょう。

借用書の作成におけるメリットは3つ

借用書を用意すると以下3つのメリットがあります。

  • 口約束で発生するトラブルを回避できる
  • 裁判では有力な証拠になる
  • 返済を催促させられる
口約束で発生するトラブルを回避できる

借用書を作成すると曖昧な口約束のみで起きるトラブルを未然に防止できます。

借用書には借りた金額や返済方法、利息、支払期限まで詳細に記載されています。

「こんな金額を借りていない」

「返済期限なしだと思っていた」

「利息はこんなに高くない」

借用書の作成は上記のような、契約内容を忘れたり嘘をついたりして引き起こされるトラブル対策になるでしょう。

お金が関わると、どれだけ信用していた相手でも裏切られてしまう可能性は否定できません。

借用書があれば信頼関係を壊すことなく、適切に対処できます。

裁判では有力な証拠となる

借主がお金を返済しなかった場合、借主は返済を求めて裁判を起こす必要があります。

返済を求める裁判では、「貸主が借主にこれだけのお金を貸した」と認めてもらえる明確な証拠が求められます。

借用書は裁判において、お金の貸し借りがあったと証明できる有力な証拠です。

借用書がないと、他の方法で貸し借りの事実を証明しなければならないためとても時間がかかります。

特にお金を手渡ししていた場合、銀行の履歴にも残らないことで、貸し借りの事実を証明できない可能性も。

借用書を作成すれば万が一のときに貸主が被る不利益を最低限に抑えられます。

迅速な返済を催促させられる

金銭借用書には返済期限の明記があります。

返済を渋られたり、期限が近付いてきたときに、借用書があれば返済を催促させやすいことも大きなメリット。

口約束のみでは適当な理由をつけて返済を先延ばしにされてしまうケースも多くあります。

借用書に返済期限を明記しておけば、返済時のトラブル軽減につながるでしょう。

借用書の作成における主なデメリットは2つ

ここまで紹介した借用書についての情報を見ていると、メリットのみに感じます。

とはいえ、思わぬ2つのデメリットがあるため注意が必要です。

  • 貸主、借主の関係悪化
  • 収入印紙の貼付が必要
貸主、借主の関係悪化

借用書は裁判でも有力な証拠となる重要な書類のため、友人や家族間で作成するとなると、対等な関係ではいられなくなる可能性があります。

中には貸主が借用書を用意した際に「そこまで本格的な内容では困る」と萎縮してしまい、関係が悪化した人も。

カードローンなど金融機関との取引と異なり、お互いのお金に対する考え方や価値観が重要です。

実際にお金の貸し借りがなくても、付き合いを見直す必要が出てくる可能性があります。

しかし「借用書を書かなければならないなら借りたくない」という人も一定数います。

返済の意志がない、あるいはお金に対してルーズな人である可能性が高いため見極めて契約しましょう。

収入印紙の貼付が必要

借用書の作成には、貸付金額によっては収入印紙を貼らなければなりません。

お金をやり取りする際には、「印紙税」が発生します。

印紙税とは収入印紙を使用して納付する税金であり収入印紙とは証票です。

借用書は「貸主が借主にお金を貸す」と金銭のやり取りがある事実を証明する書類のため、収入印紙が必要です。

貸付金額に対して必要な収入印紙の金額は、借用書の書き方を説明する項目で詳しく説明します。

借用書を書くときの11の重要なポイントを紹介

借用書には「このように書かなければならない」といった公的なフォーマットはありません。

必要事項さえ記載があれば、基本的に書式は自由です。

とはいえ、曖昧さ回避や改ざんを防ぐためにもある程度テンプレートに則って書くことが無難です。

ここからは実際に借用書を作成するときに留意すべき11のポイントを紹介していきます。

借用書に必要な11項目と雛形

借用書には、借主と貸主の認識の齟齬(そご)が起きないよう、契約内容を可能な限り具体的に記載しましょう。

借用書に記載しなければならない項目は全部で11項目あるため、それぞれ分かりやすく解説します。

  1. 借用書の作成日、借入日
  2. 借用書には借用書の作成日の記載が必須です。

    借用書の作成日とお金を渡す借入日は、同じ日にすることが無難です。

  3. 貸主の名前
  4. 書類の最初の宛名には貸主の名前を書きます。

    借用書は誰が作成しても「借主から貸主への書類」となるので、宛名は貸主にしてください。

  5. 表題
  6. 表題には、「借用書」と記載し、この書類がどのような書類であるかを明記します。

  7. 借入金額
  8. 借主が貸主から借り入れた金額を、1円単位まで正確に記載します。

    詳しくは後述しますが、借用書では金額を漢字で書くことが一般的です。

  9. 金銭の貸し借りがあった事実
  10. 「貸主が借主にお金を貸した」との記載が漏れると借用書として認められません。

    金銭のやり取りがあった事実の記載が必要です。

  11. 返済期限
  12. 貸主に返済する期限には利息についての記載も必要です。

    「3年後」「10ヶ月以内」などアバウトな書き方ではなく、「令和△年△月△日まで」と具体的な日付で書く方が、トラブルを避けやすいでしょう。

  13. 返済方法
  14. お金の返済方法は、「いつ」「どのような方法で返済するか」を記載します。

    振込方法については合意で取り決めた返済方法を記載してください。

  15. 利息
  16. 利息をつけてお金を貸す場合、利率と利息の支払日も記載します。

  17. 遅延損害金
  18. 遅延損害金を設定する場合、金額や利率を明記します。

    どれだけ遅延したら遅延損害金を支払うか、明確な期間や期限を決めておくといいでしょう。

  19. 借主の名前、印鑑、住所
  20. 最後に、借主の情報を明記します、

    貸主は名前だけでしたが、借主は現住所と印鑑も合わせて記載が必要です。

    住所変更した場合には、貸主へ申告してください。

  21. 連帯保証人の名前、印鑑、住所
  22. 連帯保証人を立てる場合、借主と同様に名前と現住所の明記と捺印が必要です。

    連帯保証人も借用書の内容を確認し、合意してもらう必要があります。

上記以外に取り決めた特別な条件がある場合は、借用書に項目を追加します。

あまり多く項目を追加するとストレスや、支払い遅延の原因になる可能性があるため増やしすぎないよう気を付けましょう。

連帯保証人や利息なしで契約する借用書の書き方

個人間でのお金の貸し借りは、利息なし、連帯保証人なしで契約しても問題ありません。

利息なしは上記⑧の項目を、連帯保証人なしならは上記⑪の項目を削除した形で作成しましょう。

同様に、遅延損害金を設置しない場合は該当項目の削除が必要です。

利息や保証人は記載していなくても借用書として認められるものの、以下の内容を削除すると借用書として成立しない場合があります。

  • 作成日
  • 貸主の名前
  • 表題
  • 借入金額
  • 金銭の貸し借りがあった事実
  • 返済期限、返済方法
  • 借主の名前、住所、印鑑

項目を追加しすぎない、削除しすぎないよう注意が必要です。

借用書の作成で気を付けたい6つのポイント

借用書を作成するとき、記載項目以外にも注意しておかなければならない以下6つのポイントがあります。

  • 証拠書類として認めてもらうために消えないボールペンやサインペンで書く
  • 書類作成日と金銭の授受は同じ日にする
  • 借用書ではアラビア数字を使わない
  • 印鑑使用するときはできるだけ実印が望ましい
  • 1万円以上の貸付では収入印紙が必要
  • 金銭借用書は貸主と借主の最低2通は必要

知っておかなければ後からトラブルになる可能性もあるため、借用書作成前に必ずチェックしましょう。

証拠書類として認めてもらうために消えないボールペンやサインペンで書く

借用書を書くときは、必ず消せないボールペンやサインペンを使いましょう。

鉛筆やシャープペンシルでは、あとから消して書き直せてしまいます。

書類の改ざんが簡単に行えるため、消して書き直せる筆記用具では書かないでください。

鉛筆やシャープペンシルだけでなく、摩擦でインクが消えるフリクションボールも避けましょう。

フリクションボールで書いた文字は、消さなくても時間の経過により消えてしまいます。

せっかく書いた借用書の文字が消えてしまうと、書類として認められない可能性があるため注意が必要です。

借用書を書くなら油性ボールペン、油性サインペンを使用しましょう。

書類作成日と金銭の授受は同じ日にする

可能であれば、借用書に署名する日とお金を受け渡す日は同日が望ましいと言えます。

先にお金だけ渡して借用書の作成を後日にすれば、そのまま書類を作らずに逃げられてしまうリスクがあります。

借用書を確実に作成するためにも、「署名をしてからお金を渡す」とルールを決めておくことがおすすめです。

また、借用書を作成しても、お金の受け渡しは履歴が残る銀行振込で行うといいでしょう。

銀行振込でお金を渡せば、振込履歴からお金を貸した証拠として証明できます。

手渡しでは金銭のやり取りを行った物理的な証拠がないため、銀行振込がおすすめです。

改ざん防止のためアラビア数字を使わない

借用書に記載する借入金額は、アラビア文字や漢数字ではなく改ざんできない大字を使いましょう。

大字とは「壱」「弐」「参」といった、漢数字のもとになる旧字で、漢数字による改ざんも防止できます。

悪意があればアラビア文字や漢数字では、後から線を増やすことで数字を変更できてしまいます。

借用書の内容を改ざんされないように、借入金額は大字で記載することが必要です。

数字、漢数字、大字の対応表を以下にまとめたので借用書の作成時に活用してください。

数字 漢数字 大字
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
100 百、佰
10,000 十万 拾萬
1,000,000 百万 百萬、佰萬

「九」「八」「百」といった改ざんが難しい漢字は漢数字で問題ないものの、大字に統一した方がトラブル回避につながります。

また、金額を記載する時は字間を詰めて書くこともポイントです。

隙間を開けて文字を書くと、数字を増やして金額を改ざんできてしまいます。

トラブル防止にも、大字で字間を詰めて記載しましょう。

印鑑使用するときはできるだけ実印が望ましい

借用書には、借主と連帯保証人の捺印が求められます。

ここで使用する印鑑は、実印でも認印でも構いませんが、実印が望ましいでしょう。

認印では誰でも印鑑を入手できるため、書類を改ざんしやすい方法です。

特に、名前までパソコンで打ち込み、印鑑だけを捺印する借用書には実印がおすすめ。

実印は、印鑑証明を発行すれば本物かどうか判別できます。

貸付金額が1万円以上なら収入印紙が必要

先述しているように、1万円以上のお金を貸し借りする場合は収入印紙が必要です。

収入印紙は、借用書に書かれている他の文字を隠さない位置に貼付します。

収入印紙の金額は借入金額に比例して変わるため、以下表を参考に用意する収入印紙の金額をチェックしましょう。

借入金額 収入印紙の金額
1万円未満 なし
1万円~10万円以下 200円
10万円~50万円以下 400円
50万円~100万円以下 1,000円
100万円~500万円以下 2,000円
500万円~1,000万円 10,000円
契約金額を記載していない場合 200円

参考:国税庁

借入金額が500万円を超えた場合、収入印紙の金額も高額になります。

収入印紙の支払いは貸主と借主、どちらが負担しても問題ないため話し合って決めましょう。

収入印紙の金額が高い場合は折半する人がいるものの、少額であれば貸主が払うとスムーズに作成できます。

収入印紙を購入できる施設

施設名 購入できる種類
郵便局、法務局、役所 すべての収入印紙が購入できる
コンビニ 200円の収入印紙なら取り扱っている場合が多い。
取り扱いがない店舗もあるため注意が必要。
金券ショップ 額面より低価格で購入可能。
ただし在庫がある収入印紙しか購入できない。

収入印紙は上記の施設で購入できるため、都合のいい場所で購入してください。

10万円以上の貸し借りがある場合は、郵便局や法務局で購入することが無難です。

金銭借用書は貸主と借主の最低2通は必要

借用書を作る場合は、貸主と借主がそれぞれ保管できるよう2通作成しましょう。

手書きの場合には、コピーでも構いませんが、署名と捺印はコピーせずどちらの借用書にも行ってください。

貸主が原本を持ち、借主がコピーを保管しておけば、もしものときに対応しやすくなります。

コピーでは不安なら、手書きの借用書を2通作成することがおすすめです。

連帯保証人がいるときは、連帯保証人の分も借用書が必要です。

その際には連帯保証人も、署名や捺印はすべての書類に手書きで行います。

借用書は個人の手書きで作成しても効力がある

借用書について調査すると、「借用書は手書きでないと効力がないのか?」と疑問を抱いている人が多くいました。

借用書は、必要事項さえ書かれていれば手書き、パソコンのどちらで作成しても問題ありません。

パソコンで作成するとデータが残って管理がしやすく、書き間違いもないのできれいな借用書を作成できます。

手書きでは改ざんや捏造をしにくいため、トラブル防止のために手書きで作成する人もいます。

ただし、署名や捺印は必ず自筆で行いましょう。

借用書でも署名または捺印がない場合は、正式な書類として裁判で認められない可能性があります。

手書きではない金銭借用書は偽造される可能性がある

借用書を手書きせずパソコンで作成した場合、懸念要因は借用書の偽造です。

名前までパソコンで打ち込んでしまえば、印鑑を押せば簡単に借用書が完成します。

民事訴訟法では、「私文書は、本人[中略]の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と定められています。
※参考:押印についてのQ&A|法務省

法律上、署名がなかったとしても印鑑さえ押されていれば書類として成立してしまうのです。

借用書に捺印する印鑑は実印でなくてもいいため、簡単に借用書を偽造できてしまうことではないでしょうか?

結論から述べると、事実上は可能なものの、偽造した書類を押し通すことは難しいと考えられます。

偽造された借用書では警察に調べてもらっても、契約時に付着しているはずの指紋が出てきません。

簡単に偽造がバレると偽造罪が適用されるので、非常にリスクが高い手段です。

こうしたトラブル回避のためにも、借用書を作成する時は必ず直筆で署名、実印の捺印を徹底してください。

借用書を作成するまえに知っておきたい4つのこと

借用書を作成するにあたって、基本的な知識をご紹介してきました。

最後は借用書の作成前に押さえておきたい重要事項を解説します。

借用書を初めて作る人、書類の書き方に慣れていない人は事前にチェックしておくことがおすすめです。

金利や遅延損害金は内容を理解してから決める

借用書の書き方をご紹介した際に、金利や遅延損害金についても記載しました。

金利や遅延損害金と聞くと、「金融機関が定めている利息」といったイメージを持つ人も多いでしょう。

今回のように個人間のお金の貸し借りでも、任意で利息を決められます。

まずは、金利と遅延損害金はどのようなものかを解説していきましょう。

金利とは、貸したお金に利息を付けるときに設定する利息の利率のことです。

金利は自由に設定できるものの、利息制限法で上限金利が決められているため注意が必要です。

上限金利

借入金額 上限金利(年利)
10万円未満 20.0%
10万円以上100万円未満 18.0%
100万円以上 15.0%

上限金利は借入金額により変化します。

上限以上の金利を定めても問題ないものの、上限を超えた分の利率は無効となり、借主に支払い義務は発生しません。

あまりにも高い金利を設定すれば、借主が返済できなくなり延滞に繋がります。

上限以上の金利を定めても罰則はないものの、支払いが遅れる、トラブルになるといったデメリットが多いのでおすすめしません。

金利を定めるときには、借主に無理のない範囲で、双方が納得できる利率にしましょう。

次に遅延損害金の目的は、支払いが遅れた際に損害を保証する際に支払うお金です。

一般的には利息と同様に、元金(借りているお金)の残高に対して利率を設定し算出します。

遅延損害金の上限金利も利息と同様のため、借入金額に合わせて上限を超えないよう設定しましょう。

利息より利率を高く設定する場合も多い遅延損害金ですが、必ず定めなければならないわけではありません。

必要に応じて、無理のない範囲で決定してください。

金利の支払いがなければ贈与とみなされる可能性がある

個人間でのお金の貸し借りでは、利息なしで契約しても問題ありません。

とはいえ、利息なしでお金を貸すと「贈与」とみなされ、贈与税を支払わなければならない場合があります。

贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から暦年課税に係る基礎控除額110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。
引用:国税庁

つまり、200万円贈与を受けた場合、控除金額の110万円を差し引いた90万円に対して贈与税がかかる計算です。

1年間に受け取った財産が110万円以下なら、贈与税はかかりません。

税務署に「贈与ではなく借入である」と証明できなければ、贈与税の支払いを求められてしまいます。

贈与税の対象から外すには、以下3つの対策が有効です。

  1. 借用書に貸し借りの内容を残す
  2. 振込履歴など返済した履歴を残す
  3. 利息を付けて返済する

書面のみでは証明が難しい場合もあるため、可能であれば1%程度でも利子を付けておくといいでしょう。

110万円以上の借入を予定している人は、贈与税対策も必要です。

借用書は個人で作成すれば無料だが有料でも弁護士に依頼すれば安心できる

借用書を自分で作成することにどうしても不安がある人は、弁護士や行政書士に依頼しましょう。

行政書士に依頼する借用書は「金銭消費貸借契約書」と言い、借主が消費目的でお金を借りる際に作成される書類です。

名前は難しいものの、個人で作成する借用書と効力は変わりません。

弁護士や行政書士に借用書の作成を依頼した場合、作成費用で10,000円程度かかります。

金銭消費貸借契約書の作成費用は、貸主、借主どちらが支払ってもいいため、話し合って決めてください。

未成年と契約した金銭借用書は無効になるので意味ない

必要事項をすべて記載した借用書でも、未成年などの制限行為能力者と交わした契約では無効です。

制限行為能力者とは

単独でできる法律行為が制限されている者をいう。
(中略)
自分の行為の結果を判断することのできる精神的な判断能力(意思能力)をもたない者の行為は、法律上効力を生じないものとされる。
引用:コトバンク

つまり、自分の意志で契約できない、契約した内容に責任を取れない可能性がある人との契約は、借用書があっても無効なのです。

制限行為能力者は、以下4種類に分類できます。

種類 内容
未成年 18歳未満の未成年者
成年被後見人 知的障がいや精神上の障がいで判断能力を欠く可能性があるので、後見人を付けると家庭裁判所で審判を受けた人
被保佐人 家庭裁判所で、一部の法律行為をする際、保佐人のサポートが必要と審判を受けた人
被補助人 精神上の障がいにより判断能力が不十分なので、家庭裁判所で補助開始の審判を受けた人

制限行為能力者と無理に契約し、借用書を作成しないように注意しましょう。

借用書があっても10年間返済しなければ時効を迎える

お金の貸し借りは世代を超えて相続されてしまう場合があり、ストレスに感じる人が多い問題です。

お金を借りてから10年経過し、貸主が催促をしなかった場合には時効が成立して支払い義務が消滅します。

時効は借用書の有無に関わらず成立するので、借用書があっても期間内に催促や裁判を行わなかったら成立します。

では、10年間返済し続けなければ時効となり、返済しなければいいためはないか?と思う人も多いでしょう。

とはいえ、貸主には時効を中断する権利があります。

第百四十七条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
引用:民法

民法では、時効が成立するまでにお金の返済を求めれば時効は成立しないと定められています。

時効の中断を希望するには、返済希望の裁判を起こしてお金を請求しなければなりません。

裁判で借主の支払い義務が認められれば時効は中断され、次の時効は裁判終了から新たに10年間発生します。

必ず支払いをして欲しい人なら、お金の貸し借りにおける時効についても理解しておきましょう。

ローン|株式会社小林洋行