株式投資を始めるには、証券口座の開設が必要です。
また、さまざまな取引ルールもあるため、投資初心者にとっては何から始めたら良いかわからず、敷居の高さを感じている方もいるでしょう。
今回は、株式投資を始める際に押さえておきたい、基本的な取引ルールや証券口座の開設から株式の購入方法などをわかりやすく解説します。
株式投資で資産形成を始めたいとお考えの方は、ぜひお役立てください。
株式投資で利益が得られる仕組み
株式投資は、企業の成長に対する投資です。
企業が発行する株式に資金を投入し、主に売買益(キャピタルゲイン)と配当益(インカムゲイン)により利益を得ることを目的としています。
株式投資は、証券取引市場で売買が可能な、上場株式を投資対象としています。
株価は需給バランスで決まり常に変動しているため、「安く買って高く売る」ことで売買差益を得られます。
さらに、権利確定日に株式を保有していれば、持株数に応じて、会社の利益の分配を受ける権利が得られます。
そのため、継続的な収入により資産を効率的に増やせる可能性があります。
株式投資を始めるために必要なもの
株式投資を始めるには、証券口座と投資資金が必要です。また、インターネットでの取引には、PCやスマートフォンをを使います。
証券口座
株式の取引は証券会社を通じて行うため、まず証券会社の取引口座を開設する必要があります。
証券会社には、実店舗を持つ店舗型(対面)証券会社と、店舗を持たないインターネット専業の証券会社があります。
店舗型証券会社は、担当者がつき、運用のコンサルティングを受けられます。
専門家の助言を参考に取引できますが、1回の取引金額に応じて最低でも数千円程度の手数料がかかります。
インターネット専業の証券会社は、店舗を持たずオンライン取引に特化した証券会社です。PCやスマートフォンを使い、自身で注文などを行います。
また、店舗型証券会社と比べ手数料は割安で、証券会社によっては条件を満たせば手数料無料で取引可能です。
なお、店舗型でも、インターネット専用の取引コースを設けている証券会社が増えています。
コンサルティングのサービスがありませんが、手数料は低めに設定されています。
これから株式投資を始めるなら、手数料の低いインターネット取引の利用がおすすめです。
PC・スマートフォン
インターネットを通じて株式投資をするためには、PCやスマートフォンが必要です。日常的に使用しているもので始められます。
ただし、セキュリティを確保するため、OSやブラウザは最新のものを使用し、ウイルス対策を行っておきましょう。
多くの証券会社では専用の取引アプリがあり、スマートフォンから快適な取引ができます。
ただし、スマートフォンアプリは動作条件があり、一定以上のOSでないとインストール・起動ができない点に注意してください。
投資資金
株式を購入するための資金も準備が必要です。
株式は通常100株単位で取引するため、必要な金額は、銘柄によって異なります。
日本株は3,000円以下の株式が約8割を占めるため、10~30万円程度あれば、多くの銘柄を取引できます。
投資資金は、あらかじめ証券口座に入金しておく必要があります。
なお、証券会社によっては、1株から単元未満株の取引が可能です。その場合は、さらに少額から株式投資を始められます。
株式投資の始め方
株式投資を始めるのに必要な手順は以下のとおりです。
- 投資目的や方針を明確にする
- 証券口座を開設する
- 証券口座に入金する
- 投資銘柄を選択する
- 注文を入れる
投資目的や方針を明確にする
投資を成功させるために重要なことは、最初に投資の目的や方針を決めることです。
何のために、どのようなスタンスで投資をするのかを明確にすることで、必要な投資金額や期間、投資銘柄などを具体化できます。
例えば、「老後の資金を、20年間をかけて準備したい」「余裕資金で積極的に利益を狙いたい」「給与収入のほかに、定期的な収入を確保したい」などがあるでしょう。
目的により、リスクを取っても収益性を追求するのか、安定性と収益性のバランスを見るべきなのかといった方針や、必要な投資期間などが明らかになります。
証券口座を開設する
証券会社で、取引口座を開設します。証券会社はどこを選んでも上場株式の取引は可能ですが、サービス内容には違いがあります。
以下のポイントを考慮して選択すると良いでしょう。
- 店舗型/ネット型
- 手数料体系
- 取扱商品
- 入金・出金のしやすさ
- 取引画面の操作性
- 提供される情報やツール
中でも、手数料体系や取扱商品は重要です。
できるだけ取引コストをかけたくない方は、手数料無料で取引できる証券会社がおすすめです。
少額での株式投資を検討している方は、単元未満株が取引できる証券会社が有力な選択肢となります。
また、開設時には特定口座と一般口座の選択が必要です。また、併せて利益に課税されないNISA口座の作成も可能です。
口座の種類 | 年間取引報告書 | 確定申告 |
特定口座(源泉徴収あり) | 証券会社が作成 | 原則不要 |
特定口座(源泉徴収なし) | 証券会社が作成 | 必要 |
一般口座 | 自分で作成 | 必要 |
NISA口座 | 非課税 | 不要 |
口座開設はオンラインで手続きできます。申込フォームに必要事項を入力したのち、本人確認を行います。
口座開設完了までに要する時間は、証券会社によって1~数営業日です。
証券口座に入金する
口座開設が完了したら、口座に株式を購入するための資金を入金します。
ネットバンキングを利用した即時入金のほか、登録済銀行口座からの振替入金、ATMからの振込入金などの方法があります。
入金方法によって、手数料負担や反映タイミングが異なる点に注意しましょう。
入金方法 | 詳細 | 手数料 | 即時反映 |
即時入金 | 対応ネットバンキングによる入金 | 無料 | 〇 |
振替入金 | 事前登録した金融機関からの口座振替 | 無料 | 〇 |
振込入金 | ATMや他の金融機関からの振込 | 振込人負担 | × |
資金が口座内に反映されれば、株式を購入できます。この資金のことを買付余力といいます。
投資銘柄を選択する
投資したい銘柄を選択します。選び方はさまざまですが、以下のような選び方があります。
- 企業理念に共感でき応援したい企業
- よく知っている身近な企業
- 業績が好調な企業
- 配当や株主優待が魅力的な企業 など
銘柄選びを迷う場合には、証券会社が提供している、ランキングや企業データなどを参考にするのも良いでしょう。
注文を入れる
取引画面から、希望する銘柄名や銘柄コードを入力し、数量や価格、執行条件などを入力します。
【価格の指定方法】
指値注文:指定した価格で取引が成立する注文方法
成行注文:価格を指定せずに注文し、市場価格で取引が成立する注文方法
【執行条件】
当日中、今週中、期間指定:指定した期間で有効
寄付:前場・後場に立会い開始時のみ有効
引け:前場・後場の立会い終了時のみ有効
不成:指値で取引が成立しない場合に、立会い終了時に成行注文
また、NISA口座での取引は、注文時に口座種別を選択する必要があります。
注文後は、注文照会画面で成立したかを確認しましょう。
取引が成立することを約定といい、株式を購入できていれば、約定済となっています。
株式の基本的な取引ルール
株式には、さまざまな取引ルールがあります。いつどのように取引ができるのかを正しく理解しておきましょう。
取引単位
日本の株式市場での取引単位は100株で、100株を1単元とします。ただし、一部の証券会社では、市場外で1株から取引できる、単元未満株を取り扱っています。
取引時間
日本株の立会時間は、土日祝日を除く月~金曜日の9時から11時30分(前場)および12時30分から15時30分(後場)です。
また、証券会社によってはPTS市場(私設取引市場)と接続し、立会時間以外にも取引ができます。取引可能時間は、証券会社によって異なります。
なお、注文については取引時間以外でも受付可能です(※証券会社のメンテナンス時間をのぞく)。
仕事などで日中の立会時間に取引できない場合でも、空いている時間に注文を出しておくことができます。
取引成立方法
株式の取引は、板寄せ方式とザラバ方式の2つの方式で成立します。
板寄せ方式は、立会開始・終了時などに行われる売買成立方式です。
すべての売買の注文が同時に行われたとして突き合わせ、以下3つの条件を満たす価格で取引を約定させます。
- 成行の売り注文・買い注文すべてが約定
- 約定価格より高い買い注文および低い売り注文がすべて約定
- 約定価格で売り買いいずれか一方すべてが約定
ザラバ方式は、始値決定後、売買注文が合致した場合に成立する売買成立方式です。
価格優先の原則・時間優先の原則にしたがって、随時取引が成立します。
買い注文は高い価格の注文、売り注文は低い価格の注文を優先させる方式です。
例えば、800円100株の注文と801円1,000株の買い注文がある場合、800円の注文を先に約定させます。
【時間優先の原則】
同価格での注文があった場合、注文が早いほうの注文が優先して約定されます。
受渡日
取引が決済される日を受渡日といいます。日本株の受渡日は、約定日の2営業日後です。
配当金や株主優待の受け取りには、権利確定日までに受渡が必要です。
そのため、権利確定日の2営業日の権利付最終日までに株式を取得しておかなければなりません。
株式投資にかかるコスト
株式投資にかかるコストは、主に購入時と売却時に発生する取引手数料です。
手数料体系は証券会社および店頭・ネットであるか、注文方法や約定金額などによって異なります。
例えば、1,500円の株式を100株購入する場合、店舗型証券会社Aの店舗口座の手数料は、対面取引2,860円・オンライン2,288円です。
しかし、同社のオンライン専用口座のネット取引の場合は330円となります。
また、別のネット証券会社では同金額の取引でも手数料不要と、証券会社や取引口座の選択によって大きく変わります。
手数料は、利益が出るかどうかに関わらず発生します。手数料を抑えることで、より多くの利益を確保できるので、必ず確認しておきましょう。
さらに、取引手数料のほか、別途口座管理料が発生する証券会社もあります。
証券会社を選ぶ際には、コストやサービスが取引目的に見合っているかをよく検討しましょう。
初心者が株式投資を始める際の注意点
株式投資は、貯蓄と異なり元本の保証はありません。初心者が株式投資を始める際に注意しておきたいのは、以下の4点です。
- 株式投資のリスクを理解する
- 少額から投資を始める
- 長期・積立・分散を心がける
- 取引ルールを決めておく
株式投資のリスクを理解する
株式は、企業固有の要因や為替、金利などの影響を受けて日々価格が変動するため、株式投資には元本の保証がありません。
また、企業が倒産した場合には、大きく価値を失います。
投資商品のなかでは高リスクに分類されることを理解したうえで投資を始めましょう。
少額から投資を始める
株式投資を始める際は、10万円程度の少額からをおすすめします。
まとまった金額を一度に投資すると、値下がりした場合の損失が大きく、取り戻しが難しくなるからです。
特に株式投資の初心者は、少額で投資経験を積み、知識を身に付けていくことが大切です。
長期・積立・分散を心がける
株式投資は価格変動が大きくなります。
短期的な利益を目指そうとすると、一度の投資金額が大きくなったり、投機的な取引になったりして、大きな損失を被りかねません。
リスクを抑えて安定的な収益を目指すには、投資の王道である長期・積立・分散投資を実践しましょう。
長期運用は、運用益を再投資することで複利効果が得られます。
さらに、運用期間が長くなると、一時的な価格下落の影響が少なくなるため、短期に比べて安定した運用成績が得られます。
また、積立投資は感情を排除し、購入価格を平準化できます。
そして、複数の銘柄に分散投資をしていれば、1つの銘柄の価格が大きく下落したとしても、資産全体における影響を抑えられます。
取引ルールを決めておく
株式投資を始めたばかりのころは、次のように、株価の変動に振り回されて冷静な判断ができなくなることも少なくありません。
- 含み益のまま保有し続けていたのに、元の株価に戻ってしまった
- 株価が戻るだろうと保有し続けるうちに、損失が拡大した
- 相場がさらに下落するかもしれないと考え、早期に売却したら株価が上昇に転じた
感情的にならずに適切な投資判断を行うには、自分なりの取引ルールをあらかじめ決めておくことが有効です。
例えば、15%上昇(下落)で利益確定(損切り)を行う、下降トレンドが現れたら売却する、などのルールをもとに、取引を進めていくと良いでしょう。
株式投資の始め方を知り資産づくりを始めよう
株式投資の始め方は簡単です。
取引に使用するPCやスマートフォンを用意して証券口座を開設し、投資資金を入金したら、株式の購入が可能になります。
投資目的や方針に合った銘柄を選択し、運用を始めましょう。
なお、株式投資を始める際には、取引ルールやコスト、リスクなどについても理解しておくことが大切です。
少額から始めて取引に慣れながら知識を深め、資産づくりを一歩ずつ進めていきましょう。